ピストンリング固着と穴のおはなし

販促部  ヒロ伊藤です。

いつもの景色、エンジン台にセットされたエンジン↓


ヘッドを外し、シリンダーまで外すと

ピストンが↓


「うわっ!」っ思わず声が出ますね

ピストン単体にすると

誰が見ても、ダメそうなのがわかりますね・・・・

リング周りを拡大すると

スラッジによるオイルリングの固着

ピストンをひっくり返すと


オイル戻し穴のつまり

オイル戻し穴は↓

2段で穴があります。
黒のやじるしが、オイルリング下の見えている穴↓

赤いやじるしは、オイルリング溝の底に開いています。
こんな風に↓


さっきから、オイルリング・オイルリングって単語がでていますが

オイルリングって3本で出来ていて


真ん中がエキスパンダー・両端がサイドレール

こんな順番でサイドレールでエキスパンダーを挟んで取り付けられます

ピストンにセットすると

たったこんだけの物なのですが、役割は凄くて

シリンダーを潤滑するための最小限のオイルは残し
余分なオイルは掻き落とす
油膜の管理をしているんです!!(スゲーですね!尊敬しますね!)

ピストンが上昇時には、上のサイドレールからオイルがリング溝に入り
オイル戻し穴からピストンの内側へオイルが戻る構造

下降時は下のサイドレールからオイル戻し穴、そしてピストンの内側へ排出します。

ただピストンの下降時は、オイルリング下のオイルの圧力が増すので
先ほど紹介した、黒のやじるし(リング下)の穴が余分に開けられていると思います。

オイル上がり対策だと思います。

ちなみに、この戻し穴は車種によりさまざまです。

設計の古い空冷は(STD)、今回のピストンと同じようにリング溝の底の穴以外に
リング下に穴が配置されています。

今回↓

カタナ↓


CBーF↓


手持ちの写真があんまりないので
少しだけ紹介しますが
こんな戻し穴に着目することはないので、写真が分かりづらいけど
勘弁してください。

スーパースポーツ(STD)

リング溝に穴があるだけ

レースでずーっと使っていたS1000RR↓

この穴のタイプは、とても多いです。

社外品のピストンも、このタイプが多いですね

ZRX ワイセコ↓

ダエグ ヴォスナー↓

かろうじて見えるか?
ゼファー ワイセコ↓


ダエグSTD↓

オイル戻し穴は、リング溝の底のみ

GPZ900RやZZR系もSTDはこのタイプだったと思います。

この穴の配置・数だったりオイルリングの張力は
オイル上がりに直結するのでメーカーも色々考えてこの仕様になっていると思います。

オイルリングの役割も凄いけど、戻し穴を抜けたオイルで
ピストンの冷却も兼ねているので、この穴たちも凄いんですよ!

最初に出したピストン↓(何回も登場)

リングが固着してオイルリングの役目を果たせていません。

オイル上がり(オイル消費)もひどかったと推測できます。
乗り続けていたら、リングが全て固着して大変なことになっていたと思います。

まだ、このタイミングでO/Hで良かったと思います。

 

このピストンはパーツが廃盤なので修正して使用しようと思います。(リングは新品で)

本当に大丈夫?って感じるかもしれませんが

例えば↓

これが、これ↓

これ、同一のものです。

 

これが↓

これ↓

おんなじものです。

新品パーツがあれば、それに越したことは有りませんが
廃盤パーツだと、このような修正や施工をするしかないかな?

困ったら、相談してくださいね。
色々な方法がありますよ!

それではまた来週 ごきげんよ~

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